ミナト国際会計事務所は国内外の税務・会計を支援するプロ集団です
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Q&A

ここでは国際税務に関連する事項のうち、基本的な用語や概念に関してQ&A形式で説明をしています。中小企業の方々に関連の深い項目を中心に、できるだけ専門用語を使わずに分かり易く解説していますのでご参照ください。

Q1:国際税務においては租税条約が重要と聞きました。租税条約の概要 を教えて下さい。
A1:租税条約とは国と国の間で結ばれる税金についての取り決めのことです。 国境を越えて行われる取引については、二国間の税金が関係してきます。そのため取引の内容によって、どの国で税金がかかるのか、或いは両方の国で税金がかからないように二重課税の調整方法等を定めたルールが租税条約です。現在日本では96か国との間で65条約が締結されています(2016年4月時点)。

なお、租税条約で定められた課税ルールは相手国との関係もあり、日本国内の税法規定と異なる場合もあります。この場合には租税条約の規定が優先適用されます。つまり特定の国との間で行われた取引に関する課税関係は、当該特定国と日本が締結した租税条約の規定を確認したうえで具体的な課税関係を判定する必要があります。

 

Q2:海外事業に関してPEリスクがあると現地専門家から言われました。PEとは何の意味 でしょうか?

A2:PEとは、Permanent Establishmentの略で日本語では恒久的施設と呼ばれます。

恒久的施設とは、税務用語で事業を行う一定の場所・人の総称で、いわゆる税務上の支店を意味します。そのためPEがあるという事は税務上の支店があるという事を意味します。

ここで「税務上の」という表現をしたのは、海外に実際に支店登記を行っていない場合であっても、一定の要件を満たした場合には、「税務上」その国に自社の海外支店があったとみなされるという意味です。

国際税務の基本ルールに「PEなくして課税なし」というルールがあります。つまり日本企業が海外で事業活動を行った場合でも、その国でPEが無ければ外国で事業所得に対して課税される事はありません。逆にPEが存在する場合(或いは存在すると当局がみなした場合)には、日本だけでなく、事業活動を行った外国でも税金を支払う必要が出てきます。

海外事業を行う日本企業にとっては、外国で無用なPE認定を受けないよう、具体的な事業活動の範囲を検討する必要があります。なお、具体的なPEの要件については日本と外国との租税条約で決められています。

 

Q3:海外子会社の駐在員に支払われる 留守宅手当 ですが、本社で負担しても大丈夫でしょうか?

A3:支給すること自体は問題ありませんが、経費処理には問題が出る可能性があります。

先ず、駐在員個人は長期出張等でない限り原則として海外子会社所在国の居住者となりますので、本社が支給する留守宅手当について日本の個人所得税の源泉徴収は行われません。

そのため駐在員個人は原則として居住国である外国で、日本の留守宅手当も含め全世界所得を申告・納税することになります。

次に、本社で支給された留守宅手当の処理方法についてですが、こちらは注意が必要です。

最近の税務当局のスタンスとしては、海外子会社の出向社員給与について本社で負担した場合、対価性の無い寄付金として認定する傾向があります。つまり駐在員の給与については、海外子会社で負担するべきであり、日本本社が負担した場合、実質的に海外子会社の費用補填を行っていると見做される可能性があるという事です。

なお、出向先が子会社以外の海外支店や駐在員事務所の場合には本社で合算課税が行われるためこのような問題は発生しません。

 

Q4:海外子会社に貸付 を行っています。先日貸付利息が送金されてきたのですが、海外で天引きされていました。この天引き分は日本で取り戻せますか?

A4:本社で黒字が出ているようでしたら、日本で払う法人税・住民税と相殺することで取り戻すことができます。

今回天引きされていたのは、子会社所在国での源泉所得税です。貸付自体は日本本社が行っていますが、当該貸付による利息収入は日本ではなく子会社所在国で所得があったものとして子会社所在国で課税されている訳です。但し、本社では受取利息を計上し、それが日本での課税計算上収益としてカウントされますので、このままでは日本・子会社所在国の両方で課税されてしまうことになります。そのため二重課税を回避するために、日本の国内税制では、外国税額控除と呼ばれる仕組みが設けられ、日本で払うべき税額から本社が外国で支払った税金分を控除することが認められています。但し外国税額控除は、日本で払うべき税金があることが前提ですので、本社が赤字の場合には外国税額を控除することはできません。

このような場合には過去及び将来の3年間の税額と相殺する方法や外国税額を租税公課として経費処理する方法も認められています。

 

Q5:海外子会社から配当金 の送金がありました。国内子会社の場合と比べ本社側での受取配当金の税務上の処理に違いはありますか?

A5:日本では「外国子会社益金不算入制度」という制度があり、一定の要件のもと95%が益金不算入とされます。但し、この場合には、上述の貸付利息とは異なり子会社所在国で課税された源泉所得税については原則として取り返す事ができません。

受取利息と異なり配当金は子会社側で既に課税された残りの利益(税引後利益)から捻出されますので、受け取る側である日本で受取配当金が課税されてしまいますと二重課税となってしまいます。そのため国内、国外問わず、配当金に関しては原則として日本本社では益金不算入となります。なお、本規定は持株割合25%以上で且つ6か月以上継続保有を行っている外国子会社等に対して適用可能です。

 

Q6:タックスヘイブン税制 とは何でしょうか?

Q6:最近世界で注目を集めているパナマ文書の関係もあり、タックスヘイブンという言葉を聞く機会が増えています。タックスヘイブン税制とは、日本では外国子会社合算税制と呼ばれており、既に導入されている税制です。世界にはパナマのように税率を極端に低くしている国々(タックスヘイブン)があります。自国の税率を下げることで課税軽減を図ろうとする世界中の個人や企業がタックスヘイブンに会社を作り、様々な手法で所得をタックスヘイブンに移転します。

その結果、所得を移転された国(主に日本を始めとする先進国)では税収が減少することになります。このような事態に対応するため、日本ではタックスヘイブン対策税制を導入し、一定の要件を満たす場合、タックスヘイブンに設立された子会社の所得を日本本社の所得と合算したうえで、日本で合算課税を行うよう規定しています。日本のタックスヘイブン税制対象国には、パナマやケイマン諸島といった特殊な国だけでなく、香港やシンガポールといった中小企業にも馴染みの深い国々が含まれていますので注意が必要です。

タックスヘイブン税制は、一部の富裕層個人や多国籍企業だけに関係ある税制ではなく、実は我々の日常にも身近な税制なのです。

 

Q7:最近中小企業に対する国際税務調査で 海外子会社への寄付金課税 を受けるケースが多いと聞きました。どのような点に注意が必要でしょうか?

A7:日本本社と海外子会社間の取引については、身内同士の取引(親子間取引)となりますので意図的に利益を子会社に移転するような取引価格が設定されないよう、移転価格税制という制度が規定されています。但し、実際に移転価格税制を導入するにはデータベース等を利用した統計手法が必要となるなど複雑なため、移転価格調査は大企業を中心に実施されています。一方で、その他多くの中小企業については、税務調査では移転価格ではなく、海外子会社に対する寄付金認定について指摘を受けるケースが殆どです。

移転価格税制と比べ、寄付金課税は取引価格の妥当性ではなく、対価性の有無により判断されますので判定が容易であるとともに、海外子会社に対して各種支援を行う側である日本本社側で認定されやすいという点でも注意が必要です。特に注意が必要なのは、海外事業推進のため本社が行う有形・無形の支援活動です。これらの支援活動(例:本社からの役務提供、販売サポート等)については、日本本社ではなく海外子会社の収益獲得のために実施される場合には、日本本社での経費性は認められず、海外子会社への寄付金として認定されるリスクがあります。そのため税務当局から無用な指摘を受けないよう、契約書や活動報告書を備えるとともに、これらの活動が本社の収益獲得活動に資するものである旨の説明資料を準備しておく必要があります。

 

Q8:最近国際税務に関連してBEPSという文字を目にする機会が増えました。BEPSとは何の意味 でしょうか?

Q8:BEPSとは「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字による略語です。日本語では「税源浸食と利益移転」と言われています。簡単に言えば、税率の低いタックスヘイブン等を利用した取引により会社の税負担を最小限に抑える行為です。

近年では、スターバックス、アマゾン、グーグルやアップルなどの世界的に有名な大企業が、過度な節税手法により批判を浴びているのはご存知かと思います。この様な事態に、経済協力開発機構(OECD)はグローバル企業の行き過ぎた節税を防ぐためのBEPS対策として、15項目の行動計画を発表しました。行動計画には、現在の国際課税の落とし穴となっている電子商取引に対する課税制度の整備や租税条約の濫用防止規定、移転価格税制の強化、更には課税当局間での相互協議や多国間協定の開発といった内容まで多岐に亘ります。

今後日本の国内税制に関しても、上記行動計画を反映した形で改正が行われていくものと考えられます。BEPS自体はグローバル企業を対象にした規制強化ではありますが、今後日本においてどのような形で規制強化が図られていくのか、また中小企業にもどのような影響が出てくるのか引き続き注視が必要です。

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